蓄積ヒストリー

内向型女子32歳。東京で、もがいて痛みながら作り出す、余白のある人生。

【感想】太田記念美術館 江戸の凸凹―高低差を歩く

原宿のがやがやした道から、一歩入ったところにある、太田記念美術館
浮世絵専門の美術館です。

気になる展示があるときはよく行っています。
6月は、「江戸の凸凹―高低差を歩く」という展示をやっており、趣味にドンピシャだったので見に行きました。笑

www.ukiyoe-ota-muse.jp



東京は、坂のまちです。
地面はコンクリートでおおわれても、コンクリートのビルがにょきにょき建っても、土地の裸の姿は江戸時代から変わりません。浮世絵と、現在の同じ場所の写真を並べている展示もあり、地形は変わらないことが一目瞭然でした。

今回の展示で最も心に残ったのは、北尾政美の「江戸名所の絵」。
ヘリもない時代ですが、浮世絵師が想像力を使って、本所深川方面から江戸城方面を俯瞰で描いています。(上のリンク先に掲載されています)

この絵を見ていたら、ふ、とひらめきが降ってきました。江戸って、自然のみどりや凸凹地形の中に、人の暮らし(家々)が溶け込んで調和していた都市だったんだ!と。

今の東京は、人間が作ったハコモノが地を覆い尽くしています。
東京が成熟する過程で、人間が利便性と物質的豊かさを求めて集まり、人間中心の都市となっていきました。

でも、今は時代の曲がり角で、豊かさの意味が変わってきているように思います。
物質的ではなくて、心が安らぎ、充実すること。
人間だけが好き勝手するのではなくて、みどりや、生きものと共生すること。
江戸の姿に、そのヒントがあるような気がします。

江戸時代に戻ることはできないし、戻る必要はない。
でも、東京は、アップデートが激しい都市だから、小さな更新(再開発)のたびにちょっとずつでも、地域の文脈や地形に合わせた景観をつくっていく。たとえば、地形と建物の連続性を意識してみたり、水辺を活用してみたり、地域にもともと生えていた植物を植えてみたり。

1つ1つは小さくても、そんな更新が続いていけば、50年後、100年後の東京は、江戸の豊かさを継承した都市になるのではないかな。
江戸の凸凹を見ていたら、そんな壮大なことまで思いついてしまいました。

しかし、浮世絵に描かれた江戸の人々の楽しそうなことw
髪の毛に釣り針が引っかかったり、坂を転がってきた臼にぶつかったり、トイレの前で鼻をつまんだり、落書きしたりw 

現在と比べれば、決していいことばかりではないだろうけど、小さな出来事を楽しめる、心の余裕があった時代だったのかな。
そんな想像力を掻き立てられるのも、浮世絵を見に行ってしまう理由です。