蓄積ヒストリー

内向型女子32歳。東京で、もがいて痛みながら作り出す、余白のある人生。

東京・目黒川支流の暗渠を歩き尽くせ!vol.2―うねる羅漢寺川、ありのまま今を生きる強さ―

 

なぜ、暗渠に心惹かれるのだろう。幼いころから、大好きだった暗渠。
暗渠の何かが私を惹きつけてやまない。

「目黒川支流の暗渠を歩きつくせ!大作戦」
今回は、目黒川支流の代表選手、羅漢寺川へ。

ああ、うねりうねる羅漢寺川。暗渠愛の原点に気づかせてくれました。
静かで深い暗渠の世界へ、ご一緒しませんか?

 

 「目黒川支流の暗渠を歩き尽くせ!」前回の記事はこちら

chikuseki-history.hatenablog.com

 

1 羅漢寺川の位置

羅漢寺川は、「五百羅漢寺」(目黒のらかんさん)から名付けられ、江戸っ子たちに大人気のパワースポット、目黒不動尊の目の前を流れていました。

 

今回は目黒川への合流地点から上流に遡ります。
羅漢寺川はいくつかの川が集まってできていますが、この暗渠旅ではざっくりと、水色と緑の川跡を確認。
特にじっくり歩いたのは、水色の流れです。

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(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工


高度経済成長期前まで、こんな感じで川がありました。

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(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工

地形を確認すると、羅漢寺川にそって深い谷が刻まれているのがわかります。

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(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工


2 目黒不動尊で崖と湧水を味わう

 羅漢寺川は目黒不動尊の目の前を流れていたため、川の両岸は崖になっています。必然的に不動尊は高い場所に。
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the GAKE

 

不動尊の崖からは湧水が溢れ、独鈷(とっこ)の滝と名付けられています。非常に水っぽい現場…


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水かけ不動明王。悪いところに湧水をかけると治るらしい。頭にかけようとしたら、顔面に直撃してしまった…美人になるかしら

 

3 羅漢寺川ラビリンス


さて、目黒不動尊の先から羅漢寺川が本領を発揮します。

 
ラビリンス…

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ラビリンス…!
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ラビリンス…!!
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美しきうねり。マンホール。時の蓄積を感じる護岸。
新しい舗装がちょっと浮いているけれど…。


そしてこの先。
静かな暗渠道に突如水音が鳴り響きます。

!?

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!!

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!!!

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住宅街のど真ん中、崖からあふれる、湧水との出会い。
どうやらパイプやグレーチングは最近取り付けられたもよう。

この暗渠道、片側が高い崖になっています。
反対側は、家が背を向けて建っていて、家の裏側と崖に挟まれたスキマ空間。
車は当然通れず、人ひとり分の狭い道。
じめっとしていて、日陰で、へびのようにうねっていて。
スピードやスタイリッシュさを求め、日々進化する都市・東京に、こんなに非効率な空間が残っている。
 

立ち止まると、静寂に響く湧水の音。たまに聴こえる鳥の声と、風の音。
…ここは自然豊かな山の中か!?

羅漢寺川の暗渠道、しっとりした空気は、東京の生活でささくれだった心に潤いを与えてくれます。なんだか、自分らしさが戻ってくるような…
 

なぜ暗渠に心惹かれるのだろう。
そのとき、答えが急に腑に落ちたのです。
 

4 私が暗渠に惹かれる理由―内向型のまま生きたい―

「なんで考えてからじゃないと動けないの?まずは行動でしょ。」
「ぼーっとするな」
「ちょっと何言ってるかわからない」

 

私は、「内向型」という特性を持っています。外部からの刺激に弱く、エネルギー回復のためにひとりの時間が必要です。じっくり考え、自分で納得してからでないと、思いが言葉にならず、行動できません。
対する言葉は「外向型」。人と話したり、とにかく行動したりするのが得意なタイプです。

社会では、外向型の性格がもてはやされます。発言が苦手で、行動も遅い内向型の私は、誤解されたり、怒られたり。
自分はダメな人間なんだ…と落ち込む日々でした。

 

chikuseki-history.hatenablog.com 内向型としての葛藤はこちらの記事などに書いています

 

どんどん再開発されていく東京のオモテ側は、外向型の人のよう。
「どんどん行動して新しいこと取り入れてすごいね!」
「バリバリ働いてかっこいい!」

シュッと決まっていて、キラキラして。
社会的には、まだまだこちらが評価されています。

 

じゃあ、暗渠は?
東京のウラ側にひっそり存在する、川の跡。キラキラした東京の中に埋もれています。ほとんどの人は気がつきません。


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だけど、そこにあった川は、谷を刻み、東京の地形を生み出しました。
暗渠は東京のベースを作った、縁の下の力持ち。
更新を繰り返す東京にもまれながら、農村を流れる小川から、住宅街のドブへ変化。
そして、下水道へ、道路へ。
暗渠には、東京の発展の歴史が何層にも畳み込まれ、滲み出ています。

一見、非効率で、存在意義がないように見える暗渠。でも、目に見えない暗渠が東京の基礎をつくりだし、支え、歴史を物語っている。

…ん?何かに似ているぞ。
外向型優位の社会で揉まれ、消耗しやすい。

だけど、物事をじっくり考えるからこそ、気づくことがある。その視点は、社会に新たな切り口を与える。
毎日をかみしめながら、一歩ずつ自分の物語を紡いでいく。
社会の中で埋もれがちだけれど、気づく人は気づく、静かな深さ。

そう、暗渠はまるで内向型のようだ…

私は、暗渠に自分と同じ匂いを感じていたのかもしれません。
暗渠が湛える静寂は、東京のオモテ側で擦りきれた心を包み込み、伝えてくれます。

「あなたは私と同じで、その深さが魅力だよ。わかる人だけわかればいい。」

暗渠に行くと、「ありのままの自分でいいんだ」って思える。
私は世間が言う「キラキラ」な生き方はできない。したいとも思わない。
暗渠のように、ひっそり、でも力強く生きていこう。

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深く静かな暗渠の世界へよこうそ…


でも、ゆっくりじっくり生きている内向型だって、全く変化しないわけではありません。日々の人生経験を経て、少しずつ成長しています。
暗渠にも、都市のアップデートの波は少しずつ迫ってきます。

 

羅漢寺川の暗渠も舗装が新しくなり、湧水もパイプとグレイチングが取り付けられていました。
これまでも、川から道路へ姿を変えてきたことを考えれば、変化があって当然。
通行人のことを考えると、補修は当然。
でも、ボロボロ道に味わいがあったから、ちょっとさびしい印象でした…

気になる暗渠たち、すぐに歩きに行かないとな。
いつ、姿を変えてしまうかわからないから。
大きく変化する東京の中で、いつ、失われるかわからないから。
「やるべきこと」に追われて、大切なことを後回しにして、間に合わなくなってはじめて、尊さに気が付くのはいやだ。
人生も同じこと。今の自分の気持ちは、今しか感じられないから。
今を大切に、一生懸命生きていたい。

ああ、やっぱり暗渠に行くと、雑念が洗われる。
今を生きる勇気をもらえる。

No 暗渠 No ライフ!
 

※おまけ「目黒競馬場跡地」

羅漢寺川のすぐそば、1907年から1933年まで、「目黒競馬場」がありました。

関東大震災直前の地図。競馬場ありますねえ。

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(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工

現在もトラックの形に道が残っており、往時の馬になった気分で走れます!

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(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工

上の地図の矢印の場所から撮影。
ゆるやかなカーブ。今は完全なる住宅街。

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遠き観客の声がこだまする…

ちなみに今回のまち歩き、湧水で物思いにふけっていたら、時間切れになってしまいました…
羅漢寺川最上流部まで辿れなかったので、今月中に再チャレンジしてきます。
お楽しみに!?