蓄積ヒストリー

内向型女子32歳。東京で、もがいて痛みながら作り出す、余白のある人生。

高輪で見つけた、東京の「過去」「更新」「未来」―高輪消防署・高輪橋架動橋・高輪ゲートウェイ駅―

 

 今、高輪がおもしろい。


今の高輪を歩けば、東京の「過去」「更新」「未来」が、全部見える。
時の蓄積が、都市の歴史を作ることを感じられる。

ギリギリ外出できた先週、春の高輪を歩いてきました。
こんなご時世、ちょっぴりリラックス。まちあるき気分を楽しんでいただければ幸いです。

 

 

1 高輪消防署 二本榎出張所に潜入!

 高輪で見つけた、東京の「過去」。
 かつての高輪はお江戸の玄関口。そして、邸宅が立ち並ぶまちでした。
 高輪の高台に建つ高輪消防署庁舎は、1933年落成。約90年間、高輪のまちの変化を見つめてきました。

現役ですが、帝都復興時代を感じる、まるく美しいデザイン。

f:id:newgnmn:20200329162626j:image

f:id:newgnmn:20200329211135j:image

受付すると、中も見学できます!
円形講堂に、まるい窓に、しっとりとした階段のカーブ。


f:id:newgnmn:20200329162655j:image

f:id:newgnmn:20200329162713j:image

f:id:newgnmn:20200329162737j:image

この消防署は、地形で見ると東京湾へ降りる崖の上にあります。(ピンクの〇のところ)

f:id:newgnmn:20200406081627p:plain
(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工

消防署ができたころ、きっと周囲に高い建物も少なく、東京湾を一望できたでしょう。
今は、多くの建物と埋め立て地に阻まれて、海は遠いむこう…
さあ、崖を降りて、線路へ向かいましょう。

 

2 高輪橋架道橋


 高輪で見つけた、東京の「更新」。


 高輪ゲートウェイ駅の開業で世間がにぎわう中、ひっそり姿を変えるトンネルがあるのをご存知ですか?

 高輪橋架道橋。都営浅草線泉岳寺駅のそばです。
 車両の高さ制限1.5m。全長200m以上。
 身長154㎝の筆者でも、すれすれの低さ。


f:id:newgnmn:20200329180534j:imagef:id:newgnmn:20200329165841j:image

   頭上すれすれを山手線と京浜東北線が走っていました。大迫力…。

そんな風景も、高輪ゲートウェイ駅開業に伴う線路切り替え工事で2019年秋に消えています…。現在の地図と、少し前の地図を比べてみると、線路が切り替わっているのがよくわかりますね。

(ピンク色の線→高輪架道橋。

 緑色の丸→上の写真の場所。)


線路切り替え前
f:id:newgnmn:20200329212331j:image
(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工

現在の地図
f:id:newgnmn:20200329211822j:image

(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工
 
ここは、明治時代の開業当時から鉄道が通っていた場所。今の様子からは全く想像できませんが、当時の鉄道は海上に築堤して走っていました。(赤矢印が鉄道)
このあたり、陸上では鉄道用地を取得できなかったもよう…。

f:id:newgnmn:20200329180102p:plain
文明開化期の地図。(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工

次第に海の埋め立てが進む中で、「車町河岸」と海をつなぐ水路(今の架動橋の場所)ができ、線路をまたぎます。海からの荷物を内陸部へ運んでいたのでしょうか。

f:id:newgnmn:20200329175852p:plain
関東大震災直前の地図。(一財)日本地図センターが作成した「東京時層地図」を加工。線路も増えてきた。

その後、水路は道路へ姿を変えましたが、道路は水底より掘り下げられることなく、低いトンネルができたようです。

壁からは水が染み出し、ひんやりした空気。
オレンジ色の照明が、異世界感を醸し出します。
たまにやってくる車は、超低空飛行のモンスターのよう。
なが~いトンネルを歩くと、不思議なダンジョンに迷い込んだみたいな気分になります。


f:id:newgnmn:20200329165921j:image

f:id:newgnmn:20200329165933j:image

でも、低く、はばびろく、なが~い架動橋の風景も2020年の4月で見納め。
高輪ゲートウェイ駅周辺の開発事業のため、高輪橋架道橋は車両通行止めとなります。新たに、十分な高さと広さを取ったトンネルができるんだとか…。便利になるのは嬉しいけれど、小さな東京名所がひとつ消えていく。。

と、ここで自分の水路センサーが反応!
高輪橋架道橋、泉岳寺側の入口脇。なんだか異臭が…

覗いてみると…


f:id:newgnmn:20200329171710j:image

ぬ!?

 

f:id:newgnmn:20200329202610p:plain


なんと、水辺を発見!

架道橋の方向へ、水路が伸びています。海と河岸をつないでいた水路の名残り!?

 

この水路も、開発で消えてしまうのかな。
水路の奥には、高輪ゲートウェイ駅の折り紙の屋根が見えました。
目の前には、昨年秋にぶった切られた線路の向こう、開発工事のクレーンでしょうか。
遠くに、切り替えられた山手線と京浜東北線が走ります。


f:id:newgnmn:20200329172021j:image

高輪の新旧が同時に見られるのは、今だけ。
これから、最先端の美しいまちが出来ていくのでしょう。
高輪橋架道橋は、破壊と更新を繰り返す東京を象徴する場所でした。

3 高輪ゲートウェイ


 高輪で見つけた、東京の「未来」。
 2020年3月14日に暫定開業した、高輪ゲートウェイ駅です。


f:id:newgnmn:20200329172658j:image

f:id:newgnmn:20200329172606j:image
 明朝体も悪くない


 周辺にはまだ何もありません。
 2024年までに複数の高層ビル、商業施設が完成するなんて、ほんとうなんでしょうか。

f:id:newgnmn:20200329172636j:image

 2027年には、リニア新幹線が品川駅を起点に開業。羽田空港にも近い立地です。
お江戸の玄関口だった高輪は、大都市どうしをつなぎ、世界ともつながる日本のゲートウェイになる。
意外とすぐじゃん…また、東京が大きく変わります。

 リニアなんて、子どものころは遠い未来の夢だったのに。あっという間に時は流れて、すぐそこまで未来がやってきている。

 刻一刻と変化するまち、年を重ねる自分。
 「今」は「今」しかない。

未来にワクワクする一方で、失われていくもの、今の尊さに胸がつまります。

f:id:newgnmn:20200329172725j:image
 来年廃止される「踊り子」の車両と、高輪ゲートウェイ駅。今しか見られない、またひとつ、失われる風景。

 おっといけない、しんみりとしてしまった。
 いつまでも過去にしがみついても、進歩できないからね。アップデートは、明るい未来をつくるため。

 

変わらないもの。失われるもの。新しいもの。

すべてまちの歴史として蓄積し、物語になっていきます。

4 高輪で見つけた「過去」「更新」「未来」


2024年、再び高輪を訪れ、未来が現実になっていることを、この目で確かめたいな。
高輪消防署には、大変貌をとげた街を、90年前と変わらずに見つめていてほしい。
架道橋は、歩きやすく、車もスムーズに通れるようになっているんだろう。
東京オリンピック、大盛況で終わっているよね。
…33歳の私は何をしているんだろう。
きっと、大丈夫。今を積み重ねて、明るい未来をつくろう。


日常の「あたりまえ」がゆらぐご時世。
高輪のまちが教えてくれたのは、過去を愛おしむ温かさと、今の尊さと、未来を信じる強さでした。