蓄積ヒストリー

内向型女子32歳。東京で、もがいて痛みながら作り出す、余白のある人生。

妻の姓を選択、反対されたらどうする?心がまえと乗り越え方―妻の姓を名乗って結婚しました!②―

「結婚で妻の姓を名乗りたい」
そう思ったら、多くの場合、まずは両親に報告しますよね。

結婚で、妻の姓を名乗る割合は約5%。
少数派であるため、特に夫の両親は驚き、理由を聞いてきます。

60代以上の両親だと、「姓は妻が変えるもの」と思い込んでいる場合が多いので、なおさらでしょう。

納得してもらえればよいのですが…
反対された場合、交渉の進め方が今後の親族づきあいにも影響します。
私の夫の両親も、結婚自体には賛成ですが、妻の姓を名乗ることは反対でした。

私たちの経験を振り返ると、うまくいった点もあれば、反省点もあります。
皆さんが、正直な気持ちを押さえ込まず、交渉に臨めるように。
参考になればと思い、経験談を書いていきますね。

4回に分けて書きました。本稿は②です。
最初から読んでいただける方は①からどうぞ!
私が妻の姓を選びたかった理由
(本稿)妻の姓を選択、反対されたらどうする?心がまえと乗り越え方
法律婚か事実婚か?ふたりの価値観が大切
これからの家と名字の在り方・私たちの選択がつくる物語


【当時の私の状況】
同じ境遇の方を想定して書きます。

・私(29歳):一人娘。妻の姓を名乗りたい
・夫(30歳):長男。妻の思いを尊重したい
・私の両親(60代):妻の姓を存続させたい
・夫の両親(50代):長男が妻の姓を名乗るのは反対

※夫には弟がひとりいます


夫の両親から反対を受けたとき。
重要だと感じたのは次の5つです。

 

1 意志を固く持ってブレない

なぜ妻の姓を名乗りたいのか。
自分の言葉で話せるようにしてから、交渉に臨みましょう。

たぶん、反対の理由って、感情的なんです。
「妻の姓を名乗るなんて聞いたことない」
「婿にとられるのは嫌」とか。

妻の姓を名乗る理由を、論理的に語れたら、冷静に交渉できるはず。

実は、私は心がぶれている状態で交渉を進めてしまいました。
自分の家のあり方に疑問も感じていたからです。

私の家の状況や、私が妻の姓を名乗りたかった理由は、こちらをご覧ください。

chikuseki-history.hatenablog.com

 

今は、個人が自由に幸せを追求できる時代。
なのに、住む場所は固定され、土地や墓の維持管理に労力がかかります。

子孫には、心を大切に生きてほしい。
だったら、自分の代で、終わりにしてもいいんじゃない?
そう思う気持ちもありました。


父は「名字と土地と墓を守れ」の一点張り。家の古さを鼻にかける雰囲気もありました。
そんな中で、妻の姓を名乗ろう!と強く思えなかったんです。

でも、この迷いが失敗の原因でした。
義父母と話す際、曖昧な態度を取ってしまったんです。

義父母は、息子が妻の姓を名乗ることを「違和感がある」と言いました。

「では、妻が夫の姓を名乗ることに、違和感がないのはなぜですか?」

今なら冷静に切り返せたと思います。
でも、当時は心がブレていて、強く出られなかった。

結果的に、両家顔合わせの場で、私の両親と義父母が対立。
破談になりかねない状況になりました。
窮地に立ってから、私は改めて家族や地域の歴史と向き合い、やはり自分の姓を残したいと思い直したのです。

親が言うからではなく、自分の心の底から、そう思ったのです。

迷いによって、両家に余計な争いが生まれ、義父母に無駄な期待をさせてしまった。
大きな損失でした。
でも、もし妥協して夫の姓を選択していたら…
大切なものを失い、取り返しのつかないことになっていたでしょう。

結婚は人生の一大事だから、心が揺れるのは仕方ありません。
両親から色々言われたらなおさらです。

でも、自分が一番大切なものってなに?

時間をじっくりかけて、まずは自分の心と向き合ってください。
決して焦ってはいけません。
心が揺れて、なかなか決まらなかったら、予定を延期にしてもいい。
最も時間をかけるべきプロセスだと思います。

 

2 家制度の概念を持ち出さない

「長男を婿にとられるなんて、うちは蔑まれている」

夫の両親には、そんな感情がありました。

でも、これは間違っていて。
「嫁」や「婿」という概念は、戦前の家制度の名残です。

姓の選択は、「夫婦が新しく作る戸籍の筆頭者」を選択することです。
家制度のように、相手の家の戸籍に入るわけではありません。

筆頭者も、役所が戸籍を検索する際のインデックスになるだけ。
家制度で絶対的権限を持つ「家長」とは違うんです。

結婚後の家庭は、ふたりが意見を出し合って築いていく。
家に格上も格下もない。
嫁も婿もない。

ただ、親は家制度の名残が今より色濃い時代に育っています。
私の父も、家が古いことを盾に、義父母に威圧的な態度を取ってしまいました。
家制度の概念を持ち出すと、話がこじれます。

少なくとも、結婚の当事者であるふたりは、自由で平等な思想をもち、交渉に臨むことが重要です。

親が家制度の概念を持ち出しても、議論に入らない。親を止める。
強い意志を持つべきと部分だと思います。

3 夫婦ふたりの考えは一致させる

私は、義父母と自分の両親が対立し、途方に暮れました。

でも結局、今の日本では、結婚はふたりが決めるものです。
ふたりが十分に検討して、妻の姓を名乗ろうと決めたら、それが全てです。

もちろん、結婚は家同士の話でもある。
でも、究極的に親は関係ないと思います。

重要なのは、ふたりの考えを一致させること。
周囲の人、全員にいい顔はできないと覚悟することです。

私は、自分の名字をつなげて、未来の力にしたかった。
夫は、私の思いに感銘を受けて、妻の姓を名乗ろうと言ってくれた。

ただそれだけです。
まあ、簡単に割り切れるなら、苦労せずに済んだのですが。

ふたりの考えを一致させるのに、「Q&A作成」が役立ちました。
義父母の不安を夫に聞き取ってもらい、ふたりで回答を作成したのです。

具体的には、私の両親との同居や、土地や墓のことなど。
将来について、結婚前に二人で話すよい機会にもなったと思います。

4 反対する人の善悪を判断しない。でも、我慢せず怒って。

義父は、息子が妻の姓を名乗ることを最後まで許せなかったようです。若い女性に強く意見を主張された経験もなかったのでしょう。
結婚直前には、感情をコントロールできずに、私や両親を罵倒しました。


稚拙な態度への怒り。
今後の付き合いへの不安。
ネガティブ感情が溢れ、結婚のスタートが台無しに…

今なら、可能な限り、感情に流されない努力ができると思います。
当時は、義父を「悪」だと思ったから、ネガティブ感情が湧いてしまったんです。


もちろん、かなり理不尽で男尊女卑な発言をされたので、正当に怒ることは必要だったと思います。

義父の発言後、フツフツと怒りが湧いてきたので、夫に(痛くない程度に)飛び蹴りしたり、夫の胸ぐらを(軽く)つかんだりして暴れましたw


でも、必要以上に義父を敵視して、ネガティブ感情に振り回されたのは、エネルギーの無駄だったと思います。

(義母は最終的には理解があったので、それは救いでした。)

今も苦手意識があるけど、義父を悪人扱いしない。
善悪を判断したら、自分は正しく、相手を蔑むことになってしまう。
平等の思想とも離れてしまいます。

人それぞれ考えや正義がある。
生きてきた時代も、価値観も違います。

義父も、息子の幸せを願う気持ちと、傷つくプライドの中で葛藤したのでしょう。

だから、頭ごなしに否定せず、反対する人の立場を想像する。
無駄に争わないことが、自分の貴重なエネルギーを守るためにも大切だと思います。

でも、怒りが湧いたら、我慢せずに吐き出して。

尊厳が傷つけられたら、怒るのは当然です。
ただ耐えていたら、心が傷ついてしまいます。


怒りの感情を出し切ったら、フッと力を抜いて。

客観的、冷静でいることを、意識してみてください。
これも、なかなか難しいですけどね。。

5 妥協を検討する

妥協点として、夫婦別姓を実現できる事実婚も検討しました。
ただ、私たちにとって、事実婚は難しいという結論になりました。
検討内容は別の記事にまとめますね。

 

chikuseki-history.hatenablog.com

 

6 結婚するのはふたり

なかなか大変でしたが、私たちは妻の姓を名乗り、結婚しました。

交渉を通して得られたもの。

「親に何を言われても、お互いの意見を尊重し、ふたりで自由な家庭を築く」

ふたりの確固たる共通認識が生まれたのは、収穫だったと思います。


一方、傷もできてしまいました。
両家の親はお互いに良い印象がなく、付き合いはほぼありません。

もっと結婚を祝ってもらいたかった。
両家仲良く、新しい愛のかたちを作っていきたかった。

ふたりで幸せなはずのに…
ふとした瞬間に、悲しいな、と思ってしまいます。

悲しみは、夫を選んだ自分を疑う気持ちや、義父や父への怒りに形を変え、結婚を後悔することもありました。
自分が選んだ道を疑うのは、とてもつらいことです。

だけど、完璧な方法はありません。
結婚の手続きは初経験だから、なにかしら失敗する。後悔する。
でも、現実は、そういうものなのでしょう。

思い通りにいかない現実に向き合い、ふたりでどうするか考え続ける。
それが、結婚なんじゃないかな。

反対されて、うまく交渉できなくて、悲しみが残っても。
きっと時が解決します。
結婚出来たら、ふたりの幸せに集中するしかないです。
悲しみに囚われて、ふたりの幸せをないがしろにしたら、また後悔するでしょう。

やはり、結婚は究極的にはふたりなんですね。


だから、「妻の姓を名乗りたい」という気持ちがあるなら。
その選択で、ふたりが幸せになるなら。
反対されても、冷静に対応すること。
あきらめずに、自分の心を大切にすること。

 

まあ、ここでは、ブレるな、感情に流されるな、と書きましたが…
人間だから、ブレたり、感情に流されたりするのは当たり前。

簡単なようで、自分の心を大切にするのは難しいんですよね。。

 

とても人間くさくて、スッキリとはいかないプロセスだと思います。

だからこそ、逃げずに取り組むことで、得られるものがあるのだと、今は思っています。

 

しかし、なぜ、妻の姓を名乗るときに、こんな苦労があるんだろう。

夫の姓を名乗るなら、強く反対されることもないのに。その裏にある、多くの女性の我慢や悲しみは、語られないのに。

 

やっぱり、理不尽だな。

 

交渉を進めながら、
「これからの家と名字はどうあるべきか?」考え続けていました。

よろしければ、つづき④をご覧ください。
妻の姓を名乗るにあたり、経験談や気持ちのゆらぎを4回に分けて書いています。本稿は②です。①と③の記事も参考になるかもしれないので、読んでみてくださいね。

つづき④

chikuseki-history.hatenablog.com


妻の姓を名乗って結婚しました!シリーズ
私が妻の姓を選びたかった理由
(本稿)妻の姓を選択、反対されたらどうする?心がまえと乗り越え方
法律婚か事実婚か?ふたりの価値観が大切
これからの家と名字の在り方・私たちの選択がつくる物語