妻の姓を名乗って結婚した私たち。
結婚に至るまで、さまざまな葛藤がありました。
詳細は以下の記事をご覧ください。
①私が妻の姓を選びたかった理由
②妻の姓を選択、反対されたらどうする?心がまえと乗り越え方
③法律婚か事実婚か?ふたりの価値観が大切
④(本稿)これからの家と名字の在り方・私たちの選択がつくる物語
「これからの時代、家と名字ってどうあるべきなんだろう?」
今回の経験を通して、私が考え続けたことでした。
家制度はもうないのに…葛藤を伝える
ところで、改姓した夫も、5%のマイノリティになったわけですが…
やはり、各種手続きは大変だったそうで、対応してくれた夫にはとても感謝しています。
ただ、ひとつだけ腑に落ちないそうで。
改姓したと周囲に伝えると、「婿になったんだ!」と言われてしまうらしいんです。
私たちは、ふたりが対等で、尊重し合える家庭を築きたいのだけど…
今の日本には、嫁も婿もないんだけど…
「嫁」「婿」だけではなく、「入籍」という言葉もそうですね。
結婚したらふたりの新しい戸籍を作るのに、「相手の家の戸籍に入る」意味の「入籍」がいまだに使われます。
夫婦の姓を統一する仕組みの中で、家制度の概念が中途半端に残っている。
さらに、若い人にも概念が無意識に刷り込まれている。
それが、この問題の根深い原因なのかもしれません。
私自身も、「名字、土地、墓を守りたい」という気持ちと、「自分で自分の人生を選びたい」という気持ちが相反し、混乱してしまいました。
自由に生きたい、と思いながらも、「家」にいちばんこだわっているのは自分ではないか?と。
夫婦同姓は、「家族としての一体感を高める」ことを理由に、今も採用されています。
夫婦同姓でなければ法律婚ができないからこそ、私たちふたりは話し合い、どんな家庭を築きたいのか考えました。
もし別姓で結婚できたら、ここまで考えなかったかもしれない。
私も、無意識のうちに、夫婦同姓で男女が法律婚という仕組みを前提に、考え、動いてしまっている。
この記事を書きながらも、葛藤が続いています。
今は、時代の過渡期なのでしょう。
一昔前まで単一的だった、「幸せになるための価値観」が多様化している。
でも、まだ古い価値観は日本社会に深く根付いている。
「自由に生きたい!個性を活かして生きたい!」
そう願う私自身にも、葛藤がある。
論理的にすべて説明できたらスッキリするけど。
葛藤があるのは、人間だから当たり前。
その上で、今の自分にできることは、
・矛盾の中で「今」を生き、葛藤した事実を、言語化すること。
・葛藤を、ありのまま次世代に伝え、襷を渡していくこと。
襷を受け取った次世代が、新しい時代の中で、また悩み、考え、自分で選ぶ。
その中で、古い価値観が徐々に変化し、新しい社会ができていく。
そう信じています。
これからの時代の名字と家の在り方って?
今回、妻の姓で法律婚を選ぶにあたり、色んな感情に飲み込まれました。
マイノリティの5%になろうとすると、強い意志が必要ですね。
やはり、この国における「スタンダードな家族像(男女が結婚して男が家を継ぐ)」に合わせて、法律が作られているからでしょう。
でも、選択的夫婦別姓が実現すれば、すべて解決するのでしょうか。
例えば、本当はふたりで妻の姓を名乗りたいのに、周囲に反対され、その逃げ道として、夫婦別姓を選んでしまったら。
「改姓は女性がするべき」という思い込みを、逆に強化することにつながります。
夫婦別姓の場合、こどもの姓をどうするかも重要な問題で。
夫婦ふたりの考えを子どもに伝え、何よりこども自身が自分で考え、選択しなければなりません。
制度が変わることも大切。
でも、「自分の価値観を言語化し、生き方を自分で決める」ことができて初めて、本当に、心を大切に生きられるようになるのだと思います。
現代は、自分の意志で、生き方を選択できる時代です。
一方で、自己と向き合ったり、周囲に説明したりするのは大変です。1つの道を選べば、断ち切られる希望もあるでしょう。
決断には苦しみが伴うから、多数の意見や、無難な道に流されてしまうかもしれません。
家や名字も、これに当てはまると思っています。
自分の頭で考えず、「古い家は守るべきだ」と保守的になったり。
「夫婦は同姓でなければならない」法制度のもと、なんとなく、夫の姓を選んだり。
でも。
これからの時代、家と名字の在り方を決めるのは、やっぱり、ひとりひとりの選択ではないでしょうか。
誰かと生きるか、ひとりで生きるか。
何をして働くか。働かないか。
どこに住むか。
子どもを持つか、持たないか。
つらいとき、状況に負けるのか、自分で工夫して歩きだすのか。
日々の小さな選択にも、価値観が反映されます。
もがいて、傷ついて、ときには後悔しながら、一生懸命生きてきた人生が、世界で一つだけ、あなたの物語になります。
誰かとともに生きるなら、家族の物語になります。
あなたの決断は、子孫や周囲の人の価値観や、運命に、大きな影響を与えるかもしれない。
私たちは、先人の多大なる犠牲と努力によって築かれた、「生き方を自分で選べる時代」に生きています。
だからこそ、誠実に考えながら、もがきながら生きることに、きっと意味があるのだと思います。
結婚の際に、名字をどうするか。
夫婦にとっても、子孫にとっても、大きな選択になるはずです。
だから、少しでも、自分の名字を残したいと思ったら。
いちど立ち止まってみてはどうでしょうか。
結婚における名字の選択は、どんな家族になりたいかを考える第一歩です。
たとえ、理解し合えなくても。今の制度ではどうしようもなくても。
伝えあって、知ることがまず第一歩。
どちらかが、大切にしたいものを押し殺して、我慢する関係は対等ではありません。
互いの価値観を認められなければ、落とし所を考えるか、別の道を歩くか。
次の一手を考える必要があります。
時間と精神力が必要なプロセスだからこそ、面倒になってしまいがち。
でも、自分の名字に思入れがあるなら。
このプロセスを踏むことで、どんな結論になっても、互いを尊重できる関係になれると思います。
ひとりひとりの物語を大切にする未来へ
もし、子どもが生まれたら、伝えたいことがたくさんあります。
日本各地にある命のルーツ。
各時代のご先祖さまが頑張って生きてきたこと。
あなたは、命のリレーの先に生まれた奇跡的な存在であること。
だけど。
今回私が名乗った名字や、土地を、今後も守れと子孫に強く要望し、生き方を縛るのは違うと思っています。(それでも私は弱いので、無意識に期待してしまうと思いますが…)
土地やお墓をどうするか。
名字をどう考えるか。
子孫の選択によって生まれる、新しい時代の新たな物語。
子孫に選択を任せ、信頼できるように。
お互いをひとりの人間として尊重しあえる、家族をつくっていきたいと思います。
趣味に燃えて生きる幸せ
仕事をがんばる幸せ
なんでもない、日常を送る幸せ
幸せのかたちは、ひとそれぞれ。
みんな、一生懸命、自分らしい幸せを探し、選ぼうとしています。
そのなかで、うまくいかないこと、痛みを感じることは誰でもあると思います。
周囲にわかってもらえなくて、つらい思いをすることもあるでしょう。
それと同じように。
妻の姓を残したい、と思っている人がいること。
妻の姓を選んだ人がいること。
妻の姓を選ぶ選択も、夫の姓を選ぶ選択と同じように、平等にできること。
法律婚をしたいのに、今の制度では、できない人がいること。
世の中は、男女が夫の姓を選び、法律婚をすることを前提に、動いています。
でも、それ以外の選択を希望している人もいると、認識する人が増えたら、痛い思いをする人が、少しでも減るんじゃないかな?
「妻が姓を変えるのが当然だと無意識に思ってた!」
「妻の姓を名乗りたいって、言っちゃいけないと思ってた!」
まずは、そんな気づきのきっかけになればと思い、経験談を書きました。
結婚した女性に対して、
「名字は何になったの?」「新姓を教えてください」
結婚のときに、「俺の名字になってください」「入籍しました!」
こんな言葉を使う前に、立ち止まる人が増えたらいいな。
ひとりひとりの名字には、物語があります。
その名字で生きてきたあなたの物語であり、命を繋いでくれたご先祖さま、みんなの物語でもある。
性別、時代関係なく、ひとりひとりが懸命に描いてきた物語です。
お互いが大切にしたい物語を語り合い、ふたりのかたちを選択できる人が増えたら。
ひとりひとりの、小さな意識の変革が、社会の変革にもつながっていくと思います。
妻の姓を名乗るにあたり、経験談や気持ちのゆらぎを4回に分けて書いています。本稿は最終稿の④です。
①から③の記事も参考になるかもしれないので、読んでみてくださいね。
①私が妻の姓を選びたかった理由
②妻の姓を選択、反対されたらどうする?心がまえと乗り越え方
③法律婚か事実婚か?ふたりの価値観が大切
④(本稿)これからの家と名字の在り方・私たちの選択がつくる物語