蓄積ヒストリー

内向型女子32歳。東京で、もがいて痛みながら作り出す、余白のある人生。

暗渠(あんきょ)―川の跡が語る過去の東京―

都市河川が大好きな28歳女子です。
今日は東京の「暗渠」について語ります。

暗渠ってなんだよ…って声がしますね。
暗渠は、かつて川だったところ。
川を埋め立てたり、蓋をしたり、下水道へ転用したりした場所。

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(蓋かけ暗渠 杉並区阿佐ヶ谷近辺)

暗渠は、川だったときの記憶や匂いを強烈に放っていることが多いです。
暗渠を通じて、都市の過去の姿が浮かび上がってきます。

暗渠がある場所は、谷になっていて、ちょっと湿っていて。
川だったときの姿を彷彿とさせるうねりがあります。
たまに、橋や井戸が残ってたり、銭湯や釣堀が周辺に多かったり。


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(苔むしうねる暗渠 渋谷区代々木)

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(井戸のある暗渠 渋谷区代々木)


東京だって、ほんの100年ほど前までは、林や田んぼが広がっていました。
川は、その中を流れ、子どもたちが遊び、人々の生活を潤していました。

でも、人口が増えるにつれて、あっという間に宅地化の波が東京を飲み込みます。
…川も少しずつ、消えていった。

 

戦争が終わって、やってきた高度経済成長期。
残っていた川もドブとなり、衛生の観点からも不要なものとなりました。

かつての自然豊かな東京の姿も、そこに川があったことも、忘れ去られた現在。
人々はコンクリートの東京で、今日の暮らしを必死に送っています。
そんな人々の暮らしの集積が、現在の東京のエネルギーとなっている。 

東京には、めくるめく土地利用の変化があって、焼失と復興があり、人々の暮らしの変化がありました。

アップデート、アップデートを繰り返して、今の姿になった。
東京は、刻一刻と変化し続ける、ダイナミックな都市です。

でも、東京の暗渠は、アップデートの蓄積に埋もれた過去の東京が、ひょいと顔を出して、むき出しになっている場所。

「もう忘れたかもしれないけど、確かに存在していたんですよ」
時の流れに上塗りされた過去の東京が、静かに、確かに主張している場所。

暗渠に足を踏み入れ、目を閉じる。
100年前、自然の中を駆け回り、川で遊んだ子どもたちの姿が見えるような…
川とともに暮らしていた人々の生きざまがみえるような…
ドブ川のにおいがよみがえるような…

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(橋跡、マンホール、暗渠 渋谷区初台 )

暗渠は都市のタイムカプセルです。